世界の中耳炎事情 – 発症率から見えてくる悲しい現実とは?
こんにちは、ヒゲもやしです。
今回はワールドワイドな視点から中耳炎を考えたいと思います。ずばり、世界各国の中耳炎事情についてです!
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ワールドワイドな中耳炎の発症状況
これまで中耳炎事情については、厚生労働省の患者調査や、医療給付実態調査、協会けんぽの統計データ等から、各種統計を探し出して集計し、考察に使用してきました。
今回は海外に目を向けます。安直ですが、世界保健機関(WHO)が中耳炎の患者数についてデータを公表しているのでは?と考えいろいろ探してみましたが、思うようなデータが見当たりません。
あきらめかけていたところ、WHOではないのですが、いい感じの文献を発見しました。
こちらがその文献です。
・Burden of Disease Caused by Otitis Media: Systematic Review and Global Estimates
直訳すると「中耳炎に起因する疾患の要旨:系統的レビューと世界規模の推計」です。2012年にアメリカで発表されています。
中耳炎は英語で「otitis media」といいます。「tympanitis」ともいいますが、あまり世界的に使用されていないようです。
システマティック・レビューというのは、簡単に言うと、様々な論文を収集して統計的なデータを統合し、結論を導く手法です。つまり、数多くの文献に目を通して結論出そうぜ的な考えです。
MIT医学部によって編集された論文です。世界最高峰の大学様が関わっているので、文句のつけようがありません。そんな論文を使用させていただきます!
世界の中耳炎発症率
急性中耳炎の発症率は10.85%(年間)です。毎年7億9百万人が発症し、その51%が5歳未満の乳幼児です。
慢性化膿性中耳炎の発症率は4.76%(年間)であり(年間)、毎年3千1百万人が発症、22.6%が5歳未満の乳幼児です。
また、3歳の誕生日を迎えるまでに、80%の子供が急性中耳炎を経験するとのこと。以前、国内の中耳炎発症率を調べたことがありますが、0歳から4歳の5年間における中耳炎発症率は約70%だったので、近い値を示していますね。日本の中耳炎発症率は世界的には少し低い傾向にあるとも言えます。
さらに、7歳までに6回以上の急性中耳炎の再発を経験する割合は40%とのことです。発展途上国においては、中耳炎が慢性化し難聴や、乳様突起炎、髄膜炎などの後遺症が蔓延しています。
特に低年齢における長期間の難聴は、言語や認知の発達に大きく影響するために、大きな問題となっています。本当に可哀相な状況です。
論文より抜粋して、年齢階級ごとの発症率を表にしました(年間の発症率)。
年齢階級 | 急性中耳炎 | 慢性化膿性中耳炎 |
0~11 | 45.28% | 15.40% |
1~4 | 60.99% | 10.13% |
5~9 | 22.15% | 8.31% |
10~14 | 18.50% | 3.89% |
15~19 | 3.53% | 3.36% |
20~24 | 3.14% | 4.80% |
25~34 | 1.56% | 3.31% |
35~44 | 1.49% | 3.17% |
45~54 | 1.77% | 4.10% |
55~64 | 1.92% | 3.74% |
65~74 | 2.10% | 2.47% |
75~84 | 2.34% | 2.55% |
85歳以上 | 2.27% | 2.73% |
乳幼児の発症率が突出して高く、高齢になると上昇する点は全世界共通ですね。
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地域別の中耳炎発症率
論文の中では、世界を21の地域に分けて分析しています。この21の地域はWHOが定めたもので、日本は中国、韓国、北朝鮮、モンゴルと同じ「東アジア」(Asia East)に属します。この地域別の発症率(1年間で発症する確率)も表にしました。
地域 | 急性中耳炎 | 慢性化膿性中耳炎 |
中央アジア | 7.90% | 4.05% |
東アジア | 3.93% | 3.67% |
アジア太平洋地高所得国 | 3.75% | 3.02% |
南アジア | 14.52% | 6.56% |
東南アジア | 8.15% | 4.69% |
オーストラリア | 7.25% | 3.41% |
カリブ海諸国 | 9.08% | 4.18% |
中央ヨーロッパ | 3.64% | 3.69% |
東ヨーロッパ | 3.96% | 3.75% |
西ヨーロッパ | 5.91% | 3.39% |
ラテンアメリカ アンデス | 5.39% | 1.70% |
ラテンアメリカ 中央 | 6.78% | 3.92% |
ラテンアメリカ 南 | 4.25% | 3.60% |
ラテンアメリカ 熱帯 | 5.90% | 3.74% |
北アフリカ中東 | 8.67% | 4.41% |
北アメリカ高所得国 | 5.46% | 3.06% |
オセアニア | 28.56% | 9.37% |
サハラ以南の中央アフリカ | 43.37% | 7.56% |
サハラ以南の東アフリカ | 22.81% | 6.06% |
サハラ以南の南アフリカ | 14.71% | 4.79% |
サハラ以南の西アフリカ | 43.36% | 7.22% |
全世界 | 10.85% | 4.76% |
南アジア、オセアニア、アフリカといった発展途上国が属する地域の発症率が高いですね。
まとめ
発展途上国における中耳炎の発症率は他の地域よりも高く、深刻な問題となっています。世界の中耳炎事情はどうなんだ?と軽いノリで調べた自分が恥ずかしくなります。
医療が満足に受けられない地域においては、治療されずに放置される中耳炎が長期間の難聴を招き、その後の人生・生活に深く影響してしまいます。医療体制のみならず、政治や経済、教育等も関連するため、非常に根深い問題です。
当サイトは引き続き中耳炎に関する話題を扱って参りますが、悲惨な状況下で苦しんでいる人々がいることを忘れることなく、中耳炎の啓蒙に努めたいと思います。
最後に、引用した論文「Burden of Disease Caused by Otitis Media: Systematic Review and Global Estimates」の編集に携わった方々に感謝致します。
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